2016-01-08 15:32 | カテゴリ:映画音楽
いま世界は、スター・ウォーズの最新作、エピソードVII/フォースの覚醒で賑わっていますね!
僕も先月、両親と映画館で観てきました。

監督は、生みの親ジョージ・ルーカスから今作のJ.J.エイブラムス(個人的に『クローバーフィールド/HAKAISHA』がオススメ)へと移ったわけですが、音楽はこれまでどおりジョン・ウィリアムズが担当しています。

ジョン・ウィリアムズの映画への貢献は計り知れません。ほんの一部を挙げましょう。
(ジョーズ…E・T…スーパーマン…未知との遭遇…ホームアローンシリーズ…インディージョーンズシリーズ…スター・ウォーズシリーズ…ジュラシック・パーク…ハリーポッター(メインテーマ)…etc.)

ここで皆さんに訴えたいのは、次の3点です。
①劇伴だけでなく、「メインテーマ」として、音楽だけでその映画の世界観をドカンと描く能力が、彼にはあること。
②「彼のサウンド」は確固としていながら、作品に合わせて多彩な引き出しから音楽を繰り出してくること。
③クラシック音楽の潮流を上手く受け継ぎ、効果的に表現していること。

今回は、特に③について解説していこうと思います。
ジョン・ウィリアムズは、クラシック音楽からの影響がかなり強いと思います。
例えば、ホームアローンの冒頭、家族で空港で大慌てするBGM…これは完全にチャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』のロシアの踊り(トレパーク)のパロディです(笑)

また、スターウォーズのエピソードIV(つまり第1作目)の冒頭スター・デストロイヤーのシーンなんかは、明らかにホルストの組曲『惑星』の[戦争の星 火星]からの影響ですよね。

彼のサウンドの源流としては、やはりホルスト、エルガーなどの、ヌケの良いイギリスサウンドが感じられます。
ドイツ、フランス的要素はありません。あとは、わずかにロシアチックなところがあります。既に述べたチャイコフスキーがありますし、最新作エピソードVIIのエンドロールの一部には、ショスタコービッチ的なところが初めて登場します。

さて、導入はここらへんにして、本題に入りましょう。
『スターウォーズ』は全部ストーリーが繋がっているので、全作合わせると、15時間?ほどの大作になります。
クラシックで言えば、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』(約14時間)に匹敵します。偶然かもしれませんが、これによく似た映画『ロード・オブ・ザ・リング(&ホビットの冒険)』シリーズの合計時間もまた、これに匹敵するでしょう。

『スターウォーズ』
ワーグナーの楽劇
『ロード・オブ・ザ・リング(&ホビットの冒険)』

これらの共通点として、時間が長大であること、世界観、ストーリーが壮大であること、登場人物が多いこと、が挙げられると思います。これらを、中心軸とまとまりを持ってストーリー展開させるにあたって、必要不可欠なものがあります。

それは、音楽によるライトモティーフ(示導動機)の使用です。
これは、クラシック音楽における、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのオペラでよく使われてきた手法で、
要するに登場人物やアイテムに付された「テーマ曲」のことです。
(これについては、前回の記事『天元突破グレンラガン』においても、少し触れましたね。)

ロード・オブ・ザ・リングでは、主人公ホビット族の、心やすまる純真なテーマや、金の指輪がアップで映るときに流れる、あの悪魔的な誘惑のテーマ、敵勢のサルマンとオークのテーマというものが、視聴者の印象に残るように設計されています。

さて、スターウォーズではどうでしょうか。
言うまでもなく皆さんの脳裏にこびりついているのはダース・ベイダーのテーマではないでしょうか。楽曲としては『インペリアル・マーチ』(和訳すれば、帝国の行進曲?)といいます。
様々なメディアでの露出もあって、強く印象付けられていると思います。
インペリアル・マーチがババーンと登場するのは実はエピソードV「帝国の逆襲」なのですが、そのメロディの核となるものが、テンポや音高を変えながら、作中を通して至る所に登場します。
エピソードI「ファントム・メナス」では、あのちっこくて純真なアナキン少年の可愛らしいテーマの中にさえ、暗示としてベイダーのテーマが顔を覗かせます(憎い演出!)。

さて、そのインペリアル・マーチ。なぜあの音楽はキャッチーなのか、というのが今回の真の議題です。
まず、行進曲なので、人が列をなして歩く、あの2拍子が良いのでしょう。
テンポ感としては、モーツァルトの「トルコ行進曲」にかなり近いと思います。
あと、エルガーの「威風堂々」行進曲でしょうか。だれもが耳にする、クラシックの有名ドコロです。
とにかく、拍子とテンポからして、キャッチーなのです。

さてタイトルにもあるように、次は調性。つまりキーです。ここから少し専門的な話になります。
『インペリアル・マーチ』は、ト短調で書かれています。英語で言うとGマイナー、ドイツ語ならG-mollです。
さて、このト短調。全部で24ある調の一つですが、個人的にかなり特殊な性格を持っていると思います。
クラシックで言えば、中学校の音楽の必修でもある、シューベルトの歌曲「魔王」ですね。あれはト短調です。カッコいいです。あと、ヴェルディの『レクイエム』の、あの鬼熱い「Dies irae」(ディエス・イレ)ですね。これも皆さん絶対どこかで(エヴァンゲリオン旧劇予告、バトルロワイヤル予告など)聞いたことあると思います。

このト短調、ただ厳粛でカッコいいのではなく、個人的には堕落の意味合いが強い気がします。つまり、根本的にダークサイドなのです。何故か?

それは、ト長調(Gメジャー)の裏だからです。

ト長調といえば、クラシック音楽で言えば、まずバッハの作品に多くの宝が存在します。
『主よ人の望みよ喜びよ』『G線上のアリア』『ゴルトベルク変奏曲』『甘き喜びのうちに』
あとは、モーツァルトの『アイネクライネ・ナハトムジーク』などでしょうか。

とにかくどれも、無垢で軽く甘い、至上の調なのです。
光の調、つまりライトサイドなのです。

そのト「長」調と比べた時、ト「短」調は、個人的にですが、とてもダークサイドに堕ちた気がするのです。

同じことが、神の調「ニ長調(Dメジャー)」と、悪魔の調「ニ短調(Dマイナー)」においても言えるのですが、この話はまたいつかすることにしましょう。

とにかく、ダースベイダーのテーマにト短調を持ってきたジョン・ウィリアムズさん、Good Job!と言いたいわけです。


さて、キャッチーな理由として、テンポ、拍子、調と挙げてきたので、残りはメロディー、リズム、和声(コード進行)
ということになります。ここらへんはまとめていきます。

さて、曲風としては、「インペリアル・マーチ」は、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」やプロコフィエフの『ロミオとジュリエット』の「モンタギュー家とキャピュレット家」(どれもみなさんご存知かと思われます。)に近いと思います

どちらも勇壮で、権力的で、威圧的です。

ただし、インペリアル・マーチのメロディーは、その主音であるソ(G)の音の中心性、回帰性がより強くなっています。
コード進行、ベース進行においても、ト短調の主和音への回帰性が強く、

なんかこう、とても頑固な感じがします

それは、帝国軍の強さを印象づけるためでしょうか?
それとも、物語における、アナキンの頑固さの現れでしょうか。


とにかく、ジョン・ウィリアムズは、このダースベイダーのテーマを作中に散りばめていますが、そのことによって、エピソードIからエピソードVIまでが、アナキンの一生の物語として捉えやすくなっていることは事実です。

皆さんも今度観るときは、そうしたことに気をつけてみてみると良いかも?
これから新作もまだ続くようなので、私も期待しています。
何か発見がありましたら、またご報告いたします。それでは。

(次回は、念願のエヴァンゲリオンについて書きたいと思います。劇中のクラシック音楽の用い方に焦点を当てたいと思います。乞うご期待!)
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